脾臓摘出後には肺炎球菌ワクチンを!

 
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  脾臓摘出後には、肺炎球菌などによる脾臓摘出後重症感染症(OPSI)にかかる可能性があり、その死亡率は50~75%とされています。脾臓摘出をしたことがある人は、肺炎球菌ワクチンを忘れずに接種してください。

 

 脾臓摘出後に肺炎球菌による重症感染症にかかられたという方のお話を聞きました。肺炎球菌ワクチンを接種していなかったようです。予防できる疾患でもあり、とても残念なことです。

 成人の23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)は、2歳以上の脾臓摘出患者については保険適応があります。しかし、その情報が過去に手術を受けた該当者までは届いていないようです。

 脾臓摘出後におこる重症感染症は、脾臓摘出後重症感染症 overwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と呼ばれています。

 

OPSIはなぜ起きるのか

  OPSIはなぜ起きるのでしょうか。宮崎大学の楠元さんの症例報告から引用させていただきます。

楠元規生他. 脾臓摘出22年後に発症したoverwhelming postsplenectomy infection. 感染症学雑誌 2009;83(3):261-265 [PDF] 
  OPSIは脾臓摘出後数日から数年を経て感染症を発症し,短期間にシ ョ ッ クやDICが激烈に進行し,50%から75%と高い死亡率が報告されている.脾臓は食菌・浄化, 特異的免疫応答,オプソニン産生を行うとされ,脾臓摘出者ではこれらの機能が失われるため,重篤な感染症を引き起こすといわれている.また,その起炎菌はS. pneumoniaeが最も多く,50~90%と報告されている.OPSIの合併頻度は脾臓摘出者の約5%と報告され,発症までの期間も5日から35年と幅広く分 布しており,常に発症がありえると考えられた.

 

 楠元さんらは、脾臓摘出後時間がたっていてもOPSIを発症する可能性があると、注意を喚起しています。

 

 英国では、脾摘患者がフォローが十分になされていないという実態を指摘する横断研究がありました。

Waghorn DJ. Overwhelming infection in asplenic patients: current best practicepreventive measures are not being followed. J Clin Pathol. 2001 Mar;54(3):214-8. PubMed PMID: 11253134; PubMed Central PMCID: PMC1731383. 
・OPSIの77例を検討
・脾摘患者は術後24日から65年後に発症
・死亡率は48%
・肺炎球菌が原因の87%
・発症前にワクチン接種していたのは31%
・抗菌薬による予防などについて助言されていた人はほとんどいなかった

 

 現在、脾臓摘出時には、手術2週間前または緊急手術後には可及的すみやかに接種することがすすめられており、実施されていると思います。ところが、過去に手術を受けた人や長期的な追加接種については、ほとんど配慮されていないように思います。

 日本国内におけるOPSIの実態はどうなっているのでしょうか・・・。

 

OPSIを予防するために

 それでは、OPSIを予防するためには、どうしたらよいのでしょうか?調べてみました。

 PubMedで少し検索してみましたが、脾摘患者や無脾症に対して肺炎球菌ワクチンを接種するとOPSI発症が減るかどうかを検証した研究は見当たりませんでした。

 こちらのレビューが参考になると思いますので、ご紹介します。

Melles DC, de Marie S. Prevention of infections in hyposplenic and asplenicpatients: an update. Neth J Med. 2004 Feb;62(2):45-52. Review. PubMed PMID:15127830. 
Preventive strategies are very important and fall into three major categories: immunoprophylaxis, antibiotic prophylaxis and education. Studies have shown that many asplenic patients are unaware of their increased risk for serious infection and the appropriate health precautions that should be undertaken.
 

 

 脾臓がない該当患者に対しては、以下の予防策が推奨されています。

予防接種
2か月以上:7価肺炎球菌ワクチン、Hibワクチン、髄膜炎菌ワクチン(C型)
6か月以上:インフルエンザワクチン
2歳以上:23価肺炎球菌ワクチン(5年後の追加接種)
抗菌薬予防投与
18歳未満:脾摘後2年間は毎日抗菌薬の予防内服
すべて:「スタンバイ」抗菌薬=発熱・悪寒などの症状発症すぐに抗菌薬を内服する
教育
すべての対象者に
(詳細はぜひ本文をご覧ください。)

  

 まさに、「OPSIの予防に重要なのは予防接種、抗菌薬の予防投与、教育」「多くの脾摘患者や無脾症患者は、重篤な疾患のリスクがあることを知らない」との指摘通りではないかと思います。われわれ医療従事者が、適切な情報提供をすべきであると、肝に銘じたいと思います。
 

肺炎球菌ワクチンの追加接種について

 ツイッターから「肺炎球菌ワクチンの接種は一度でよいのか?」とのご質問をいただきました。


 再度、引用したレビューにはどのように記載されているか確認してみました。尚、この論文は無料で全文ダウンロードできるようになっています。興味のある方はぜひ、ご一読ください。

Melles DC, de Marie S. Prevention of infections in hyposplenic and asplenicpatients: an update. Neth J Med. 2004 Feb;62(2):45-52. Review. PubMed PMID:15127830. 
There is no consensus on the reimmunisation policy in hyposplenic and asplenic patients. Several studies advise revaccination with PPV23, because specific antibody levels decrease in high-risk patients as well as in healthy patients for a few years after first vaccination.(36,47-51) Weintrub et al. studied the duration of antibody response of pneumococcal polysaccharide vaccine and the effect of booster immunisation in patients with sickle cell anaemia.(50) They concluded that antibody levels had fallen by three to five years after first immunisation. Mean antibody levels after booster immunisation were significantly increased (which is not what one would expect from a thymus-independent vaccine), and no serious adverse events were noted. Giebink et al. reported in splenectomised patients a linear serum antibody concentration decline by 24 to 32% from the peak antibody level during the first year after vaccination.(36) These data suggest a need for revaccination after three to four years. Rutherford et al. advised revaccination between two and six years after splenectomy.(47) Jackson et al. studied the safety of revaccination with the pneumococcal polysaccharide vaccine.(51) They demonstrated that self-limiting local injection site reactions occur more frequently following revaccination (11%) compared with first vaccination (3%). The risk of these local reactions was significantly correlated with prevaccination geometric mean antibody concentration. However, the risk of adverse events does not represent an absolute contradiction to revaccination with PPV23 for high-risk groups.(51) The USA Centres for Disease Control (CDC) and Prevention Advisory Committee on Immunisation Practices (ACIP) recommend revaccination once with PPV23 in hyposplenic and asplenic patients after five years.(34) Revaccination after three years may be considered for children with functional or anatomic asplenia, who would be aged ≤10 years at the time of revaccination. Because data are insufficient concerning the safety of pneumococcal polysaccharide vaccine when administered three or more times, revaccination following a second dose is not routinely recommended.(34)

 

追加接種は5年後に1回まで

 このレビューによると、抗体価を検討した過去の研究から、3-4年で追加接種が必要ですが、追加接種は副反応のリスクが高まるために安全性を考慮する必要があります。そこで、米国疾病予防管理センターと予防接種諮問委員会では、追加接種は5年後に1回のみを推奨しているようです。追加接種の2回目以降(つまり3回目以降)については、安全性が十分に確認できないため、一般的には推奨しない、とのことです。


 日本の情報源についてGoogle検索すると、厚生労働省のページから米国予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告に関する資料pdfが参照できます。

肺炎球菌による疾患の予防
米国予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告
廣田委員提出資料

 

 いつの資料なのか記載がありませんが、Googleには2011-2-26とあります。ご参照ください。