予防接種の効果と害

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ワクチンで60歳以上の帯状疱疹は予防できますか?

帯状疱疹

結論

 高齢者(平均年齢60歳以上、13研究、69,916人が対象)に帯状疱疹生ワクチンを接種すると、プラセボなど帯状疱疹以外のワクチン接種または接種なしに比べて、帯状疱疹の発症が少なく、予防効果がみられました。

 

効果

 帯状疱疹の発症(1研究、38,546人、追跡期間中央値 3.1年)については、ワクチン接種群は接種なし群に比べて51%少ない(リスク比 0.49)という結果でした。

 これは50人接種すると1人の帯状疱疹が予防できるという効果になります。

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 重篤な有害事象(4研究、50,896人)については、ワクチン接種群は接種なし群に比べて 8%多い傾向(リスク比 1.08)がみられました。

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文献

メタ分析(Gagliardi, 2016年) *1

 

関連記事

vaccine.hatenablog.jp

*1:Gagliardi AM, Andriolo BN, Torloni MR, Soares BG. Vaccines for preventing herpes zoster in older adults. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Mar 3;3:CD008858. doi: 10.1002/14651858.CD008858.pub3. Review. PubMed PMID: 26937872.

新しい4価インフルエンザワクチンの効果は?

インフルエンザ

結論

 3~8歳の小児に4価インフルエンザワクチン(QIV)を接種すると、A型肝炎ワクチン(HAV)接種に比べてインフルエンザの発症は少なく、予防効果がみられました。

効果

 組み入れてランダム割り付けした5,220人のうち、5,168人(QIV群 2,548人、対照群 2,584人、追跡率99%)を6か月間追跡されています。

 インフルエンザ発症は、QIV群 62人(2.40%)、対照群 148人(5.73%)とQIV群で少ないという結果でした。*1

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 重篤な有害事象は、QIV群 36人(1.4%)、対照群 24人(0.9%)にみられ、統計学的有意差はみられませんでした。

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文献

ランダム化比較試験(Jain, 2013年) *2

 

*1:ワクチン効能(efficacy)は 59.3%(95%信頼区間 45.2 to 69.7)。

*2:Jain VK, Rivera L, Zaman K, Espos RA Jr, Sirivichayakul C, Quiambao BP, Rivera-Medina DM, Kerdpanich P, Ceyhan M, Dinleyici EC, Cravioto A, Yunus M, Chanthavanich P, Limkittikul K, Kurugol Z, Alhan E, Caplanusi A, Durviaux S, Boutet P, Ofori-Anyinam O, Chandrasekaran V, Dbaibo G, Innis BL. Vaccine for prevention of mild and moderate-to-severe influenza in children. N Engl J Med. 2013 Dec 26;369(26):2481-91. doi: 10.1056/NEJMoa1215817. Epub 2013 Dec 11. PubMed PMID: 24328444.

HPVワクチンとCIN2+

HPV

結論

 15-45歳の非妊娠女性(7研究、44,142人)にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを接種すると、プラセボや肝炎ワクチン接種に比べてCIN2+*1 が少なく、予防効果がみられました。

効果

 CIN2+はHPVワクチン群では対照群 *2 に比べて、HPV16型関連病変では相対危険 0.47(95%信頼区間0.36, 0.61)、HPV18型関連病変では相対危険 0.16(95%信頼区間0.08, 0.34)と、HPVワクチン群で少ないという結果でした。

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 重篤な有害事象はHPVワクチン群 825人/21,916人、対照群 829人/21,940人と差がみられませんでした*3 。接種に関連すると判断された重篤な有害事象 *4 については、HPVワクチン群 15人/21,916人、対照群 8人/21,940人とHPVワクチン群で多い傾向がみられました*5

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文献

メタ分析(Lu, 2011年) *6

 

 HPVワクチンについてのまとめはこちらもどうぞ。

www.bycomet.tokyo

*1:子宮頸がん前がん病変であるCervical intraepithelial neoplasia(子宮頸部上皮内腫瘍)grade 2 以上の進行度

*2:プラセボまたは肝炎ワクチン

*3:相対危険 1.00(95%信頼区間 0.91, 1.09)

*4:bronchospasm, gastroenteritis, headache, hypertension, injection-site pain, decrease in joint movement at injection site, hypersensitivity to injection, chills, headache and fever

*5:相対危険 1.82(95%信頼区間 0.79, 4.20)

*6:Lu B, Kumar A, Castellsagué X, Giuliano AR. Efficacy and safety of prophylactic vaccines against cervical HPV infection and diseases among women: a systematic review & meta-analysis. BMC Infect Dis. 2011 Jan 12;11:13. doi: 10.1186/1471-2334-11-13. Review. PubMed PMID: 21226933; PubMed Central PMCID: PMC3034689.

予防接種の効果と害

 過去のブログ記事 *1 に、予防接種に関する記事が多くなってきましのたで、ここに集めてみました。

 情報が古くなっているものもありますので、発行日にご注意ください。フォーマットやタイトルなど、一部改変したものもあります。また、リンク切れがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 

 今後、「予防接種の効果と害」に関する記事は、こちらに順次更新していきたいと思います。新たな情報提供のしかたについても、模索していきたいと思います。

 

 予防接種に携わる人には、大きく分けると、ワクチンを作る人とワクチンを接種する人がいます。私はワクチン作る人でも研究者でもありません。研究に協力することはありますが、一臨床医としての関わりのみです。

 ワクチンを接種する臨床医にも、大きく分けると、流れ作業 *2 のように打つ人とよく調べて打つ人がいるように思います。私は、以前は前者だったかもしれませんが、予防接種によく関わるようになり、後者になっています。こうして、調べたことを発信するようにもなりました。

 

 どれだけ役立つのかわかりませんが、自分の備忘録として、つづけていきたいと思います。 どうぞよろしくお願いします。

 

*1:地域医療日誌 by COMET地域医療日誌

*2:やっつけ仕事や雪かきのような仕事

水痘ワクチンで帯状疱疹の予防ができますか?

帯状疱疹

※2016年3月、乾燥弱毒生水痘ワクチンの効能・効果に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」追加が承認されました。本記事は過去の記録として残しておきますが、新しい情報は下記のブログ記事等をご参照ください。

 

  • 予防接種に関するQ&A
  • 帯状疱疹ワクチンの効果
    • ランダム化比較試験(2005年)
    • 後向きコホート(2011年)
  • 力価の違い
  • 水痘ワクチンは意外と高力価
    • ワクチン力価試験(2011年)
  • 水痘ワクチンで帯状疱疹の予防ができますか?

 

 最近よく聞かれる質問です。何かで報道されたのでしょうか?

 予防接種の情報収集に有用なリンク集 - 予防接種の効果と害 を利用して、少し調べてみました。

 

予防接種に関するQ&A

 まずは日本ワクチン産業協会の予防接種に関するQ&Aから。そのものズバリの質問が記載されています。

医療関係者の方へ | 一般社団法人日本ワクチン産業協会
水痘ワクチンで帯状疱疹は予防できるのでしょうか。
 わが国の水痘ワクチンは,現在のところ帯状疱疹予防の適用はなされていませんが,高齢者に水痘 ワクチンを接種すると免疫,特に細胞性免疫が増強されるという研究成果が出ています。海外でも高齢者に水痘ワクチンを接種すると免疫,特に細胞性免疫が増強されるという研究結果が報告され,米国では,平成 10(1998)年から平成 16(2004)年にかけて,帯状疱疹の予防や重症化の防止効果に関する大規模臨床試験が行われました。その結果,高齢者に水痘ワクチン(使用されたワクチン力価は18,700 ~ 60,000PFU/ doseのもの)を接種し,帯状疱疹の発症と症状が半分程度になることが明らかにされており(Oxman MN, Levin MJ, Johnson GR, et al : A vaccine to prevent herpes zoster and postherpetic neuralgia in older adults.N Engl J Med. 2005;352(22):2271-84.),米国 ACIPでは,帯状疱疹予防として 60 歳以上に帯状疱疹予防ワクチンの接種を勧めています。 

 

 つまり、

  • 国内のワクチンには帯状疱疹予防の適応はない
  • 米国では大規模臨床試験が行われ、ワクチンで帯状疱疹発症が半分になるという結果
  • この研究ではワクチン力価18,700 ~ 60,000PFU/doseの水痘ワクチンが使用された
  • 米国では60歳以上に帯状疱疹予防ワクチン接種が推奨されている

という説明になっています。

 

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妊娠初期のインフルエンザワクチンは安全ですか?

インフルエンザ
  • 妊娠初期のデータは少ない
    • 後向きコホート研究(2012年)
  • 母体の安全性について
    • 後向きコホート研究(2012年)
  • Vaccine Safety Datalinkとは
  • VSDからの続報  
    • 後向きコホート研究(2013年)
  • 妊娠初期のインフルエンザワクチンは安全ですか?

 

 妊娠初期にインフルエンザワクチンを検討している人がふえています。流行期を前に十分備えておきたい、ということでしょう。

 一般的に妊婦には安全に接種できると言われていますが、妊娠初期の安全性については検討されているのでしょうか? 

 調べてみました。

 

妊娠初期のデータは少ない

 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から。 

Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines

Pregnant women and neonates: Currently available IIVs are classified as either Pregnancy Category B or Category C† medications, depending upon whether adequate animal reproduction studies have been conducted. Available data indicate that influenza vaccine does not cause fetal harm when administered to a pregnant woman. However, data on the safety of influenza vaccination in the early first trimester are limited (242).

 

 妊娠初期のインフルエンザワクチンの安全性についてはデータが限られている、とあります。ここに引用文献がひとつついていましたので、読んでみることにしました。

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麻しん風しんワクチンは13か月以降に

風疹 麻疹
  • 風疹騒動は一段落
  • 麻しん風しんワクチンは1歳から?
    • 横断研究(1997年)
    • 早い接種で抗体陰性が約4倍
  • アメリカとカナダの比較
    • 横断研究(2002年)
    • 遅く接種するほど高い抗体陽性率
  • 麻しん風しんワクチンは13か月以降に

 

風疹騒動は一段落

 風疹の流行はようやく一段落したようです。

風疹発生動向調査 国立感染症研究所

 

 先天性風疹症候群を予防するためにの風疹緊急対策として、妊娠を予定している女性や妊娠している女性の夫に対するワクチン接種に一部費用助成が実施されました。

 この対策の是非についてはひとまず置いておくとして、これまで予防接種を受けていなかった人に接種する機会ができたことは、よかったことです。

 

 しかし、残念ながら先天性風疹症候群は、先進国とは思えないほど多数の発症者を出してしまいました。

先天性風しん症候群(CRS)の報告(2013年11月20日現在)

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