予防接種の効果と害

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肺炎球菌ワクチンは基礎疾患がある人や高齢者にも効果がありますか?

結論

 基礎疾患がある成人や高齢者に23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)を接種しても、肺炎はやや多い傾向がみられ、予防効果はみられませんでした。*1

効果

 すべての病原体による肺炎の発症については、PPV23群では2.3%、対照群では2.6%の発症。地域住民対象(5研究)では、オッズ比 1.10(95%信頼区間 0.93, 1.30)とPPV23群でやや多い傾向がみられました。

 日本の高齢者施設居住者対象(1研究)では、オッズ比 0.55(95%信頼区間 0.39, 0.87)とPPV23群で少ないという結果でした。 

記載なし 

文献

ランダム化比較試験のメタ分析(Schiffner-Rohe, 2016年) *2

*1:なお、日本の高齢者施設居住者を対象としたひとつの研究のみでは、PPV23の予防効果がみられています。

*2:Schiffner-Rohe J, Witt A, Hemmerling J, von Eiff C, Leverkus FW. Efficacy of PPV23 in Preventing Pneumococcal Pneumonia in Adults at Increased Risk—A Systematic Review and Meta-Analysis. PLoS One. 2016 Jan 13;11(1):e0146338. doi: 10.1371/journal.pone.0146338. eCollection 2016. Review. PubMed PMID: 26761816; PubMed Central PMCID: PMC4711910.

50歳以上にも肺炎球菌ワクチンの効果はありますか?

結論

 50歳以上の成人に23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)を接種すると、侵襲性肺炎球菌感染症は少なくなりますが、市中肺炎はワクチンなしとほぼ同等で予防効果はみられませんでした。

効果

 侵襲性肺炎球菌感染症の発症についてのワクチン有効性(effectiveness、相対危険減少)は、コホート研究(8研究)では50%(95%信頼区間 21, 69)、症例対照研究(4研究)では54%(95%信頼区間 32, 69)と、PPV23群で予防効果の可能性が示唆されました。

 市中肺炎の発症についてのワクチン有効性(相対危険減少)は、介入研究(3研究)では4%(95%信頼区間 -26, 26)、コホート研究(9研究)では17%(95%信頼区間 -26, 45)、症例対照研究(7研究)では7%(95%信頼区間 -10, 21)と、予防効果はみられませんでした。

 記載なし

文献 

システマティックレビュー+メタ分析 *1
(ランダム化比較試験だけでなく観察研究や生態学的研究も含む)

*1:Kraicer-Melamed H, O'Donnell S, Quach C. The effectiveness of pneumococcal polysaccharide vaccine 23 (PPV23) in the general population of 50 years of age and older: A systematic review and meta-analysis. Vaccine. 2016 Mar 18;34(13):1540-50. doi: 10.1016/j.vaccine.2016.02.024. Epub 2016 Feb 17. PubMed PMID: 26899372.

肺炎球菌ワクチンで肺炎は少なくなりますか?

結論

 健康な成人に23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)を接種すると、プラセボまたは他のワクチン接種や接種なしに比べて、すべての病原体による肺炎の発症が少なく、予防効果がみられました。

効果

 すべての病原体による肺炎の発症(7研究、156,010人)については、ワクチン接種群は接種なし群に比べて13%少ない(相対危険 0.87、95%信頼区間 0.76, 0.98)という結果でした。

 これは1,000人に接種すると肺炎の発症が1人少ないという効果です。

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 総死亡(5研究、3,238人)については、ワクチン接種群は接種なし群とほぼ同等(相対危険 1.04、95%信頼区間 0.87, 1.24)という結果でした。

記載なし 

文献

メタ分析(Diao, 2016年) *1

 

*1:Diao WQ, Shen N, Yu PX, Liu BB, He B. Efficacy of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine in preventing community-acquired pneumonia among immunocompetent adults: A systematic review and meta-analysis of randomized trials. Vaccine. 2016 Mar 18;34(13):1496-503. doi: 10.1016/j.vaccine.2016.02.023. Epub 2016 Feb 17. Review. PubMed PMID: 26899376.

ワクチンを詳しく知りたい人のための入門書

 

 本の紹介です。

「結局、子宮頸がんワクチンってどうなんですか?」

という質問を受けることがあります。

 

 子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)はいまだに「積極的な接種勧奨を差し控える」という状態がつづいています。

 

厚生労働省の情報 

 厚生労働省の公式情報はこちら。

www.mhlw.go.jp

 

HPVワクチンとメディア

HPVワクチンの総括

 これまでのHPVワクチンにまつわる問題について、岩田健太郎さんが新書 ワクチンは怖くない (光文社新書) で総括されています。

 HPVワクチンの効果と害。そして、何がおこっていたのか、詳しく知りたい方はぜひご一読ください。

 

ワクチンとメディア 

 また「ワクチンとメディア」の項では、メディアの報道姿勢について痛烈に批判されています。一部引用いたします。

 私が知るかぎり、日本のテレビの報道関係者や新聞記者で、科学的発表や、科学論文を批判的に吟味できる人はほぼ皆無です。吟味どころか、論文そのものを読めない、読まないという人も珍しくなく、科学部の記者ですらそうです。英語が苦手というありえない理由で論文を読まない人すらいます。現在の科学論文は、少なくとも質の高いものは、ほとんど英語で書かれているというのに。

 その証拠に、テレビや新聞で科学的な発表を紹介する際、それを独自に批判的に吟味したものは私が知るかぎり、ゼロです。たいていは、研究者が記者会見を開いてメディアを招待し、自らの研究成果を宣伝します。記者は研究者によく分からない点を質問はしますが、「そこはおかしいんじゃないですか」とか「その解釈は誇張が入っているんじゃないですか」といったツッコミを入れる人はほぼ皆無です。

 

 まったくそのとおりだと思います。

 科学的ではない情報が毎日大量に垂れ流される日本の状況。これは、論文も読まずに報道するメディアの姿勢にも、深刻な問題があるのでしょう。

 論文を読まなければ、何もわからないはずなのです。

 

 ワクチンを怖がる前に、ワクチンについて少し勉強してみませんか。

ワクチンは怖くない (光文社新書)

ワクチンは怖くない (光文社新書)

 

 

予防効果を判断するための2つの指標

 予防医療の効果を判断するには efficacy と effectiveness の2つがあります。この2つは混乱しやすいですので、確認しておきましょう。

efficacy:効能、有効性などと訳されます。ある理想的な条件下で行われた介入の効果、いわゆる理論的な効果のことです。ランダム化比較試験などによって確認されます。

effectiveness:効果、有用性などと訳されます。実際の診療現場で行われた介入の効果、いわゆる現場での効果のことです。より臨床設定に近いランダム化比較試験や観察研究などによって確認されます。

 

 インフルエンザワクチンの efficacy を判断するためには、参加者のうち研究期間内に発熱などあらかじめ定めた基準を満たした人全員に診断検査(PCR法など)を行い、インフルエンザを発症したかどうかを確定診断しておく必要があります。

 このような診断検査は gold standard と呼ばれますが、両群ともに同じ条件で、全例に対して行われる必要があります。

 

 これに対して effectiveness を判断するためには、実際の診療設定に近いため現実的な研究デザインを取らざるをえません。発熱患者全員にインフルエンザの診断検査を行うことは難しいですから、症状などが一定の基準を満たした人のみに行う、インフルエンザ抗原迅速検査で代用する、などの方法となるでしょう。

 PCR法などの gold standard の実施は必須ではありませんが、最低でもアウトカム発症の評価者が盲検化されている、などの配慮が必要となります。

 

 一般的に efficacy は effectiveness に比べて効果が高く見積もられる可能性がありますので、論文を批判的吟味する際には注意が必要となります。

 

こちらの関連記事もどうぞ

www.bycomet.tokyo

肺炎球菌ワクチンの種類

 

 肺炎球菌ワクチンの種類や適応が変更となり、わかりにくくなっています。ここに覚え書きとしてまとめておきます。(2016年8月現在)

 内容の一部は 横浜市衛生研究所:肺炎球菌感染症について および添付文書情報を参照しております。

 

PCV(結合型ワクチン, pneumococcal conjugate vaccine)

  • 肺炎球菌の莢膜(カプセル)を精製して作られたポリサッカライド(多糖体)をCRM197 *1 という蛋白質に結合して作ったのが、結合型ワクチンです。
  • 蛋白質と結合させることにより、抗原性・免疫原性が高まり、乳児への接種でも免疫を作ることが可能となりました。

PCV7

  • 2009年10月16日、7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7、製品名:プレベナー水性懸濁皮下注)が承認され、2010年2月24日より小児用肺炎球菌結合型ワクチンとして発売。2カ月齢以上6歳未満の小児に対して接種されます。
  • 2013年11月1日、13価ワクチン(PCV13、製品名:プレベナー13水性懸濁注)に切り替えられました。

PCV13

  • 2013年11月1日、肺炎球菌結合型ワクチンについて、7価ワクチン(製品名:プレベナー水性懸濁皮下注)から13価ワクチン(PCV13、製品名:プレベナー13水性懸濁注)に切り替えられました。2カ月齢以上6歳未満の小児に対して接種されます。皮下注射です。
  • 2014年6月、13価ワクチン(製品名:プレベナー13水性懸濁注)については、高齢者に対する肺炎球菌 *2 による感染症の予防の効能が追加されました。65歳以上の高齢者に対して接種されます。筋肉内注射です。

 

PPSV(ポリサッカライドワクチン,pneumococcal polysaccharide vaccine)

  • 肺炎球菌の莢膜(カプセル)のポリサッカライド(多糖体)を精製して作られたのが、ポリサッカライド-ワクチンです。
  • 2歳未満の乳幼児では、接種によって有効な免疫を作ることができないため、2歳未満の乳幼児は接種対象とはなりません。
  • 1回の接種によって獲得された免疫の効果は、健康な成人では少なくとも5年間は持続するものの、接種の5-10年以降には減退していくと考えられています。
  • 上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎などには予防効果はなく、肺炎球菌の鼻やのどの粘膜への定着も阻害しないと考えられています。

PPSV23

  • 1988年11月、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、製品名:ニューモバックス)発売。
  • 2006年11月、BSE(牛海綿状脳症)問題に対応し、ウシ由来の原料を使わない製法で改めて23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、製品名:ニューモバックスNP)として販売承認を取得し、発売。
  • 接種対象は2歳以上ですが、主に高齢者に対して接種されます。筋肉内または皮下注射です。
  • 2014年10月から、高齢者の定期予防接種となりました。
  • 過去5年以内に肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンを接種されたことのある人では、注射部位の疼痛、紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると報告されています。

*1:CRM197は、毒性のない変種のジフテリア毒素です。CRMはcross-reactive materialの略称です。

*2:血清型4,9V,14,19F,23F,18C,6B,1,5,7F,3,6A,19A

ワクチンで肝細胞癌は予防できますか?

結論

 小児期にB型肝炎ウイルスワクチンを接種すると、接種なしに比べて、小児期の肝細胞癌の発症は少なく、予防効果がみられました。

 

効果

 6-19歳での肝細胞癌の発症は、B型肝炎ウイルスワクチン導入 *1 前 444人(78,496,406人年)に対し、導入後 64人(37,709,304人年)。

 ワクチン導入後で発症が69%少ない(オッズ比 0.31)という結果でした。

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 検討されていません。 

 

文献

観察研究(Chang, 2009年) *2

 

*1:台湾での予防接種プログラム

*2:Chang MH, You SL, Chen CJ, Liu CJ, Lee CM, Lin SM, Chu HC, Wu TC, Yang SS, Kuo HS, Chen DS; Taiwan Hepatoma Study Group. Decreased incidence of hepatocellular carcinoma in hepatitis B vaccinees: a 20-year follow-up study. J Natl Cancer Inst. 2009 Oct 7;101(19):1348-55. doi: 10.1093/jnci/djp288. Epub 2009 Sep 16. PubMed PMID: 19759364.